「1万円から不動産投資ができる」——不動産クラウドファンディングの広告を見て、気になっている方へ。
先に立場を明かします。私は京都・大阪で投資用マンションを売っている現役の営業マンです。「商売敵だから悪く言うんだろう」と思われるかもしれませんが、後で説明する通り、現物マンションとクラウドファンディングはそもそも競合しない別物です。だからこそ、売る側のしがらみなしで正直に書けます。
結論。私は、不動産クラウドファンディングをすすめません。お客様に聞かれたときも、そう答えています。理由は3つです。
すすめない理由①:元本保証がない
まず大前提として、不動産クラウドファンディングは元本保証のある商品ではありません。運用がうまくいかなければ、出資したお金が減って戻ってくることがあります。
「優先劣後方式だから安心」という説明をよく見ますが、正確に理解してください。優先劣後とは、損失が出たときに、まず事業者側の出資分から損を被る仕組みです。損失への「クッション」ではありますが、「保証」ではありません。クッションを超える損失が出れば、投資家の元本も削られます。
仕組みとして悪いとは言いません。ただ、「1万円から」「ほったらかしでOK」という手軽な言葉と、元本割れがありうる金融商品という実態の間には、距離があります。
すすめない理由②:匿名組合契約——中身が見えにくく、途中でやめにくい
多くの不動産クラウドファンディングは「匿名組合契約」という形をとっています。難しい言葉ですが、要するにこういうことです。
- お金の運用は、すべて事業者に委ねる
- 投資家は物件の所有者にはならない
- 運用の中身を投資家が細かくチェックする手段は限られる
- 原則として、運用期間の途中で解約・換金するのは難しい
つまり、「事業者を信じて、お金を預けて、満期まで待つ」商品です。株や投資信託のように「嫌になったら明日売る」ができません。この換金しにくさ(流動性の低さ)は、想定利回りの数字だけを見ていると見落としがちな、大きなデメリットです。
すすめない理由③:業界の歴史が浅く、過去にトラブルの実例がある
3つ目は、業界そのものの若さです。
似た仕組みの「ソーシャルレンディング」では、過去に複数の事業者が行政処分を受け、投資家への返金トラブルが実際に起きています。募集時の説明と実際の資金の使い方が違った、という事例もありました。
念のため正確に書くと、これらは不動産クラウドファンディングそのものではなく、似た仕組みの「貸付型」であるソーシャルレンディングで起きた事例です。ただし、事業者にお金を委ねて中身が見えにくいという構造は共通しているので、教訓として知っておく価値があります。金融庁も注意喚起を出しています。

もちろん、真っ当に運営している事業者もあります。業界全体が悪いとは言いません。ただ、「玉石混交で、石を見分ける情報が少ない」のが現状です。見分けるための情報開示が、株式市場などに比べてまだ薄い。これは初心者にとって不利な戦場です。
そもそも「1万円から不動産投資」は、不動産を直接持つ投資ではない
ここが、私が一番伝えたいことです。
現物のマンション投資は、実物資産です。登記簿に自分の名前が載り、融資を使って自己資金の何倍もの資産を持ち、家賃という収入を生む「モノ」を所有します。
一方、クラウドファンディングで買っているのは、不動産そのものではなく「事業者への出資持分」です。これは実物資産ではなく、金融商品です。
正確に言うと、クラウドファンディングの多くは「不動産特定共同事業法」に基づく仕組みで、法律上は不動産投資の一形態です。ただ、現物を直接所有する投資とは性質がまったく違います。
どちらが良い悪いではなく、カテゴリーが違うのです。「1万円から不動産投資を体験」という言葉は、マンション投資の入門編のように聞こえますが、実際には別の競技です。クラウドファンディングをいくらやっても、現物投資の経験にはなりません。
少額で始めたいなら、比べるべき相手は「インデックスファンドやREIT」
「少額から資産運用を始めたい」が目的なら、比較すべきはクラウドファンディング対現物マンションではなく、クラウドファンディング対インデックスファンドやREIT(不動産投資信託)です。
インデックスファンドやREITには、こんな特徴があります。
- いつでも売れる(流動性が高い)
- 何十年という運用の歴史と実績データがある
- 情報開示のルールが整備されている
- 同じく少額から始められる
想定利回りの数字だけならクラウドファンディングの方が高く見えることもあります。ただ、「途中で売れない」「元本割れの実例がある」「歴史が浅い」というリスクを引き受けた対価としての利回りです。数字の高さには、必ず理由があります。
※念のため:これは特定の商品をすすめるものではなく、一般的な情報です。投資の最終判断はご自身で行ってください。
それでもやるなら、最低限これだけは確認してほしい
ここまで読んでもクラウドファンディングをやってみたい方は、最低限これを確認してください。
- 事業者が「不動産特定共同事業」の許可・登録を受けているか(番号が公式サイトにあるか)
- 優先劣後の「劣後割合」は何%か(クッションの厚さ)
- 運用対象の物件情報がどこまで開示されているか
- 途中解約の条件
- そして、投資するのは「最悪なくなっても生活に影響しない額」まで
まとめ
- 不動産クラウドファンディングは元本保証ではない。「優先劣後」も保証ではなくクッション
- 匿名組合契約は中身が見えにくく、途中でやめにくい
- 業界は歴史が浅く、類似の仕組み(ソーシャルレンディング)で行政処分・返金トラブルの実例がある
- 「1万円から不動産投資」は不動産を直接持つ投資ではなく、事業者への出資。現物マンション投資とは別カテゴリー
- 少額で始めたいなら、インデックスファンドやREITと比較してから決めるべき
最後に。この記事にはアフィリエイトリンクを1つも貼っていません。私自身がすすめないものに、広告を貼るわけにはいかないからです。
現物のマンション投資を検討している方には、会社選びの基準をまとめた記事があります。そちらはいつも通り、本音で書いています。

きれいごとは言いません。一緒に知識を鍛えていきましょう。

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