「不動産投資で節税できますよ」——営業電話やネット広告で、一度は聞いたことがあるフレーズだと思います。
そして検索すると、「節税にならない」「嘘だ」という記事がたくさん出てきます。
先に結論を言います。不動産投資の節税は、嘘ではありません。仕組みとしては本当に税金が戻ってきます。ただし、効果が出るのは条件に当てはまる一部の人だけで、しかもその効果は年々薄れていきます。
私は現役の投資マンション営業マンです。「節税になりますよ」という説明を、仕事で実際にしている側の人間です。だからこそ、どこまでが本当で、どこからが誇張なのか、内側から正直に書きます。
結論:節税は「本当」。ただし効果が出る人は限られる
仕組みは「損益通算」。不動産の赤字を給料とぶつける
不動産投資の節税の正体は、「損益通算」という仕組みです。
マンションを貸すと、家賃収入が入る一方で、管理費・修繕積立金・ローンの利息・減価償却費(建物の価値が減る分を経費にできる制度)などの経費がかかります。経費が家賃収入を上回ると、帳簿の上では「不動産所得が赤字」になります。
この赤字を、給料の所得と合算(損益通算)できるのです。
たとえば給料に対する課税所得が1,000万円の人が、不動産で100万円の赤字を出すと、課税所得は900万円として計算し直されます。すでに給料から天引きされた税金との差額が、確定申告で戻ってきます。
これは国が認めている正規の制度で、嘘でも抜け道でもありません。
戻ってくるのは「赤字×あなたの税率」の分だけ
ここが一番誤解されているところです。
戻ってくる金額は、「赤字の金額 × あなたの税率」です。赤字が100万円で税率が43%なら、戻るのは約43万円。100万円全額が戻るわけではありません。
つまり、同じ100万円の赤字でも、税率が高い人ほど戻る金額が大きく、税率が低い人はほとんど戻らない。「節税になる人・ならない人」の差は、ここで生まれます。
境目は「課税所得900万円」。理由は税率にある
900万円を超えると、税率は約43%になる
所得税は、所得が多いほど税率が上がる仕組みです。住民税(約10%)と合わせると、ざっくりこうなります。
- 課税所得695万〜900万円:所得税23%+住民税10%=約33%
- 課税所得900万円超:所得税33%+住民税10%=約43%
900万円のラインを超えると、稼いだお金の4割以上が税金で消えていく世界に入ります。このゾーンの人が100万円の赤字を損益通算すれば約43万円戻る。節税のインパクトが目に見えて大きくなるのが、この境目です。
逆に、課税所得が400万円の人なら税率は約30%以下。同じ赤字でも戻る金額は小さく、後で説明するリスクと釣り合わなくなっていきます。
ちなみに「課税所得」は年収そのものではなく、各種控除を引いた後の金額です。源泉徴収票の「給与所得控除後の金額」から所得控除を引いた数字なので、年収でいうと目安1,200万円以上のイメージです。
営業マンが高年収の人にしか電話をかけない理由
前の記事(営業電話がしつこい理由)でも書きましたが、私たち営業マンは、誰にでも電話をかけているわけではありません。医師や高額納税者など、属性を絞ったリストに電話しています。
その理由のひとつが、まさにこれです。節税メリットの説明は、税率が高い人にしか刺さらないからです。
言い換えると、もしあなたが課税所得900万円に届かないのに「節税になりますよ」と勧誘されているなら、その提案はあなたのための提案ではない可能性が高い、ということです。
営業トークが言わない「3つの真実」
真実①:節税効果は年々薄れていく
「この節税効果がずっと続きますよ」と受け取ってしまう方が多いのですが、実際は違います。
購入した初年度は、登記費用や不動産取得税などの諸経費が一気にかかるため、赤字が大きくなり、戻ってくる税金も大きくなります。ただ、これは初年度だけの話です。
2年目以降は諸経費がなくなり、赤字は縮小します。さらに、経費の柱である減価償却費も、年数が経つと計上できる金額が減っていきます。節税効果は、初年度をピークに右肩下がりになるのが普通です。
初年度の還付額を見せて「毎年これだけ戻ります」と思わせる説明があったら、それは誇張です。
真実②:「赤字」ということは、お金が出ていっている
冷静に考えてほしいのですが、損益通算で税金が戻るのは「不動産が赤字だから」です。
100万円の赤字を出して43万円戻ってきても、差し引き57万円は出ていっています。減価償却費のような「実際にはお金が出ていかない帳簿上の経費」があるので、実際の持ち出しはもっと小さくなりますが、それでも「節税でトクした」だけで儲かることはありません。
節税は、あくまで「持ち出しの一部が戻ってくる仕組み」です。
真実③:税金対策「だけ」でマンションを買ってはいけない
これは売る側として、はっきり言っておきたいことです。
節税効果は年々薄れ、いつか終わります。そのとき手元に残るのは、マンションそのものです。立地が悪く、入居者がつかず、売ろうにも値がつかない物件なら、数年分の節税額など簡単に吹き飛びます。
逆に、物件そのものが良ければ、節税効果が切れた後も家賃収入と資産価値が残ります。
つまり順番はこうです。物件として買う価値があるかが先、節税はおまけ。「節税になるから買う」は、判断の順番が逆さまです。
「節税になりますよ」と言われたときのチェックリスト
営業を受けている最中の方は、この3つを確認してください。
- 自分の課税所得を確認する(源泉徴収票を見る。900万円が目安)
- 「その赤字の内訳」を聞く(初年度だけの経費と、毎年続く経費を分けて説明できない担当者は要注意)
- 節税を抜きにして、その物件を買いたいか自問する(答えがノーなら見送り)
なお、税金の正確な計算は人それぞれの条件で変わります。大きな判断の前には、税理士に確認するのが確実です。
本気で節税を考えるなら、急かされない場で比較を
ここまで読んで、「自分は課税所得900万円を超えているし、仕組みも理解した上で検討したい」という方もいると思います。
その場合も、電話で勧誘してきた1社の話だけで決めるのはおすすめしません。節税の数字は同じでも、その先に残る「物件の質」は会社によってまったく違うからです。
自分のタイミングで、自分が選んだ会社に話を聞きに行く。急かされない場で、複数社を比較する。前の記事でも書いたとおり、これが営業マンとして一番おすすめできる順番です。
まとめ
- 不動産投資の節税は嘘ではない。正体は「損益通算」
- 戻るのは「赤字×税率」の分だけ。目安は課税所得900万円(税率約43%)から
- 節税効果は初年度がピークで、年々薄れていく
- 「赤字だから戻る」=お金は出ていっている。節税だけでは儲からない
- 物件の価値が先、節税はおまけ。順番を逆にした人から失敗する
私は売る側の人間ですが、だからこそ言います。「節税になりますよ」という言葉の中身を理解しないまま買った人は、だいたい後悔しています。仕組みを知った上で、自分の数字で判断してください。
きれいごとは言いません。一緒に知識を鍛えていきましょう。


コメント