「相続対策になりますよ」
投資マンションの営業で、必ずと言っていいほど出てくるトークです。私も使います。
鍛太(けんた)です。京都・大阪で投資用マンションを売っている現役営業マンです。
今日は、この「相続対策になります」が本当なのか、仕組みの中身を売る側の視点で解説します。
結論:仕組みは本当。ただし「誰にでも有利」ではない
先に結論を言います。
現金をマンションに変えると、相続税の計算上の評価額が下がるのは本当です。これは営業トークではなく、税金の計算ルールそのものです。
ただし、これが本当に得になるのは「そもそも相続税がかかる人」だけです。相続税がかからない人がこの目的でマンションを買うと、意味のない買い物になります。ここを混同させる営業には注意してください。
なぜ現金よりマンションの評価が下がるのか
相続税は「亡くなった時点の財産の評価額」に対してかかります。
- 現金3,000万円 → 評価額はそのまま3,000万円
- 3,000万円で買ったマンション → 評価額は1,000万円前後になることが多い
同じ3,000万円なのに、なぜこんなに差が出るのか。理由は評価のルールにあります。
評価が下がる3つの仕組み
1. 建物は「固定資産税評価額」で計算される
建物の相続税評価は、市場価格ではなく固定資産税評価額を使います。これは実際の建築費のおおよそ5〜6割程度になるのが一般的です。
2. 土地は「路線価」で計算される
土地は路線価という国が決めた価格で評価されます。路線価は実際の取引価格のおおよそ8割程度に設定されています。さらに区分マンションの場合、土地の持ち分はごくわずかなので、土地部分の評価はかなり小さくなります。
3. 人に貸していると、さらに下がる
ここが投資マンションのポイントです。
賃貸中の物件は「借りている人の権利」の分だけ、所有者が自由にできない財産として扱われます。そのため、
- 建物は「貸家」として評価が約3割引き
- 土地は「貸家建付地」として評価がさらに下がる
つまり「収益物件として人に貸している」こと自体が、評価を下げる要素になるのです。
数字で見るとこうなる
3,000万円の現金と、3,000万円の賃貸中マンションを比べた、よくあるイメージです(物件によって差があります)。
- 現金:3,000万円 → 評価額 3,000万円
- 賃貸中マンション:3,000万円 → 評価額 900万〜1,200万円程度
評価額が約3分の1になれば、その分にかかる相続税も大きく変わります。相続税の税率は財産が多いほど高くなるので、資産が多い人ほど効果が大きくなります。
ただし、ここからが営業マンの本音です
きれいな話だけでは終わらせません。注意点を3つ言います。
注意点1:相続税がかからない人には無意味
相続税には基礎控除があります。「3,000万円+600万円×法定相続人の数」までは、そもそも相続税がかかりません。
例えば配偶者と子ども2人なら4,800万円まで非課税です。財産がこの範囲に収まる人が「相続対策」でマンションを買っても、下げる税金が存在しません。
注意点2:評価が下がっても、物件の価値が下がったら本末転倒
相続税を数百万円減らせても、物件そのものが数百万円値下がりしたら意味がありません。相続対策だとしても、物件選びの基準は通常の投資と同じです。出口で売れる物件を選ぶこと。ここは絶対に妥協してはいけません。
注意点3:やりすぎは税務署に否認されることがある
亡くなる直前に借金をして高額な物件を買うような、露骨な節税は税務署に否認された事例があります。「相続対策はやるなら早めに、常識の範囲で」が鉄則です。
買う前のチェックリスト
- そもそも自分の財産は基礎控除を超えているか
- 相続税がいくらかかる見込みか、税理士に試算してもらったか
- その物件は相続を抜きにしても買う価値があるか
- 相続する家族は、その物件を持ち続けられるか(管理・空室対応)
- 家族に物件の存在と資料の場所を伝えてあるか
まとめ
- 現金をマンションに変えると相続税評価が下がるのは本当(仕組み上の事実)
- 賃貸中ならさらに評価が下がる
- ただし相続税がかからない人には無意味
- 相続対策でも物件選びの基準は「出口に強いか」
- 具体的な税額は必ず税理士に確認を
「相続対策になりますよ」という営業トークは、嘘ではありません。ただ、あなたに当てはまるかどうかは別の話です。そこを確認してから買うのが、後悔しない順番です。
きれいごとは言いません。一緒に知識を鍛えていきましょう。
▼次に読む:相続対策で不動産を検討するなら、物件より先に「会社選び」からどうぞ。


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