結論:相続税の計算で、建物は原則として「固定資産税評価額」で評価します。リフォーム(増改築)をしても、その評価額が市区町村で見直されていなければ、リフォームの分を足して評価するのが国税庁の考え方です。「古い建物だから評価はほぼゼロ」とは限りません。
「相続のとき、建物は固定資産税評価額で評価されて、古い建物は価値がなくなっていくのは分かる。でも途中で4,000万円ほどかけてリフォームしていたら、価値はどうなるの?」
先日、相続を考えている建物の持ち主の方から、実際に聞かれた質問です。京都・大阪で20年以上、投資用マンション営業の現場にいる鍛太(けんた)です。宅建士。今日はこの質問に、国税庁の資料にもとづいて答えます。具体的な税額の判断は、必ず税理士に確認してください。
基本|建物の評価額は「固定資産税評価額」そのまま
相続税の計算では、建物(家屋)は、固定資産税評価額に決められた倍率をかけて評価します。家屋の倍率は1.0なので、固定資産税評価額がそのまま評価額になります。毎年届く固定資産税の納税通知書や、市区町村の固定資産課税台帳(名寄帳)で確認できる、あの金額です。
固定資産税評価額は、建物が古くなるにつれて下がっていきます。だから「古い建物は評価が低い」というのは、その通りです。
リフォームしたのに評価額が変わっていないとき
問題は、リフォームをしたのに、固定資産税評価額が見直されていない場合です。国税庁はこのケースを質疑応答事例で取り上げていて、答えはこうです。
- リフォーム前からある部分:今の固定資産税評価額のまま
- リフォームした部分:状況が似ている近くの建物の固定資産税評価額をもとに、構造・経過年数・用途の違いを考えて決めた金額を足す
- 似た建物が近くにないとき:リフォーム部分の再建築価額(今あらためて同じ工事をした場合の費用)から、経過年数分の減り(償却費相当額)を引いて、その70%を足す
つまり、評価額に反映されていないリフォームの分も、相続税では足して評価する、ということです。なお、相続が起きてから申告期限までの間に、市区町村が新しい評価額を付けた場合は、その新しい評価額を使います。
ざっくり、どれくらいになるのか(目安)
「似た建物がないとき」の方法で、目安を出してみます。あくまで考え方をつかむための例です。
- リフォーム費用(再建築価額とみなす):4,000万円
- リフォームから相続までの年数:5年
- 鉄筋コンクリート造の住宅の耐用年数:47年
償却費相当額は「再建築価額から1割を引いた額 × 経過年数 ÷ 耐用年数」です。
(4,000万円 − 400万円)× 5 ÷ 47 = 約383万円
(4,000万円 − 約383万円)× 70% = 約2,530万円
古い建物の固定資産税評価額が数百万円だったとしても、そこに約2,530万円が上乗せされるイメージです。「古い建物だから評価は低いはず」と思っていると、大きくずれることがあります。
実際には、再建築価額は「払った工事代」ではなく「今あらためて工事した場合の費用」ですし、まず「似た建物の評価額をもとにする方法」が先に来ます。経過年数も、1年未満の端数は1年に切り上げます。数字はあくまで目安として見てください。
人に貸している建物なら、さらに下がる
その建物を人に貸している場合は「貸家」として評価します。計算は「建物の評価額 −(建物の評価額 × 借家権割合 × 賃貸割合)」です。借家権割合は国税庁の路線価図・評価倍率表に載っていて、30%の地域が一般的です。全部貸していれば賃貸割合は100%なので、建物の評価額のおよそ7割になります。
上の例なら、約2,530万円 × 0.7 = 約1,770万円が、リフォーム部分の評価の目安です(古い部分も同じく7割になります)。
注意点|どこまでが「増改築」か、マンションの一室か
- どこまでが「増改築等」に入るかは、工事の中身次第です。間取りや設備を大きく変える工事と、壁紙や設備の入れ替えのような修繕では扱いが変わりえます。ここは自分で決めずに、工事の内容が分かる資料(見積書・契約書・図面)を持って税理士に相談してください
- まず、評価額が見直されているか確認:市区町村の固定資産課税台帳(名寄帳)で、リフォーム後に評価額が上がっていれば、その評価額を使います。見直されていなければ、この記事の話になります
- 分譲マンションの一室は、2024年1月1日以後の相続から、別の評価ルール(居住用の区分所有財産の評価)が加わっています。マンションの場合は、そちらもあわせて確認が必要です
相続のときの不動産の評価全体は、こちらにまとめています。

現場で見てきたこと
相続の相談で多いのは、「建物は古いから、評価はほとんどないはず」という思い込みです。土地の評価は気にされても、建物は軽く見られがちです。ところが、途中で大きなリフォームをしていると、その分は評価に乗ってきます。
逆に言えば、リフォームの資料がそろっていれば、税理士も正しく計算できます。工事の契約書・見積書・領収書は、相続のときまで必ず残しておいてください。ご家族にも、どこにあるかを伝えておくと安心です。
まとめ
- 相続税では、建物は固定資産税評価額(倍率1.0)で評価するのが原則
- リフォームしても評価額が見直されていなければ、リフォーム部分の価額を足して評価する(国税庁の質疑応答事例)
- 似た建物がないときは「再建築価額 − 償却費相当額」の70%。4,000万円のリフォームなら、5年後でも2,500万円前後が上乗せになる目安
- 貸していれば貸家の評価でおよそ7割。どこまでが増改築か・マンションの一室かで扱いが変わるので、具体的な判断は税理士へ
参考:国税庁 質疑応答事例「増改築等に係る家屋の状況に応じた固定資産税評価額が付されていない家屋の評価」、財産評価基本通達89(家屋の評価)・89-2(2)・93(貸家の評価)・94(借家権の評価)、タックスアンサー No.4667(居住用の区分所有財産の評価)。計算例は考え方を示すための目安です。制度は執筆時点の情報です。
ほんまに、建物の評価は思い込みでずれやすいところです。きれいごとは言いません。一緒に知識を鍛えていきましょう。
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